昔から、ゆいの心の中には悪魔が棲みついている。
気づいたときにはもういた。たぶん小学校のころから。
「どうせ無理」
「ゆいなんかにできるわけない」
「どうせいつか見限られる」
「誰からも必要とされない」
「みんなやさしいから構ってくれているだけ」
一生かけて、そういう言葉をかけてくる存在。
普段は静かにしているくせに、
たまに爆発的に責め立ててくる。
きっかけはいつもほんの些細な心のもやもや。
自分は必要ないと感じる出来事があったとき。
誰かの態度を悪いほうに想像してしまったとき。
「見限られたかもしれない」と勝手に物語をつくってしまったとき。
その瞬間、胸がぎゅっと締めつけられる。
息が浅くなって、涙が勝手に出てくる。
頭の中では、悪魔がよくない想定をどんどん並べていく。
「ほらね」
「だから言ったでしょ」
「やっぱりゆいは選ばれない」
正直に言うと、ゆいはこいつのことが嫌いだ。
こんな言葉を浴びせ続けてくる存在なんて、
好きになれるわけがない。
そして、そんな悪魔が棲んでいる自分も、嫌いになる。
でも。
冷静になると、分かってしまうことがある。
こいつは、きっとゆいを守ろうとしている。
最悪の想定をすることで、
「まぁそれは想定してたし」と言えるようにしている。
期待しすぎない。
信じすぎない。
傷つきすぎない。
先に痛みを想定しておけば、本当に起こったときの自分を楽にできるから。
守り方は、乱暴だし、不器用だし、
ぜんぜん優しくないけれど。
でも、たぶん守ろうとしている。
だからこそ、こいつとどう生きていくのかが、
ゆいがこれから向き合い続けるテーマなんだと思う。
いなくなってほしい、と思ったこともある。
でも、もし完全にいなくなったら。
慢心して、誰かを傷つけるかもしれない。
自分の弱さを忘れてしまうかもしれない。
こいつがいるから、慎重でいられる部分もある。
だから、倒すんじゃなくて。
仲良くなる、が近いのかもしれない。
仲良くなって、コントロールできるようになりたい。
それが、毎日を幸せに生きるために必要なことなんじゃないかって
ゆいは思うから。
そんな時にふと浮かぶのは、
ゆいたちが追いかけ続けている「プリキュア」という存在。
きっとここにヒントやきっかけがある。
自分の弱さと向き合う強さを持つこと。
自分や周りのネガティブな感情から目を逸らさないこと。
悪魔を消すことじゃない。
向き合うこと。
そして、戦ったあと、壊れた街は元に戻る。
一時的な感情の爆発でぎくしゃくしてしまった関係も、
時間をかけてちゃんと向き合えばきっと修復できる。
それを、信じ続けること。
ゆいがプリキュアになる、というのは、
きっとこういうことなんだと思う。
自分のことが嫌いで仕方ない自分と、どう仲良くなるのか。
嫌いな一面を、どう受け入れるのか。
きっと、この向き合い方の答えはひとつじゃない。
悪魔と戦う日もあるし、
ただ横に座る日もある。
でも、逃げない。
息が苦しくなっても、涙が出ても、
「また来たね」と言えるようになりたい。
それができたら。
ゆいの中の悪魔も、
ただの敵じゃなくて、共存する存在になるのかもしれない。
自分のことを嫌いで仕方ない夜がある人へ。
いつの間にか自分のことを責める言葉をかけてしまう人へ。
その声の主は、あなたを壊したくて一緒に生きているわけじゃないかもしれない。
乱暴で、不器用な守り方だけど。
あなたは、どんな悪魔と一緒に生きていますか?
そして、その悪魔と、どう仲良くなっていきたいですか。
